今回もまた、政策の話です。
「くらし・あんしん・たのしい」のうち、「たのしい」は観光と文化を未来につなぐ、を掲げていますが、他のものに比べると「具体例が見えづらい」とのご指摘を頂きました。
先日掲載の「湘南ピア(桟橋)プロジェクト」に続き、「藤沢モデル」で観光資源を創出する、とはどんなことか、田中しげのりの考えをお伝えできればと思います。
藤沢の観光について
藤沢が誇る観光資源と言えば、やっぱり江の島と、藤沢の海。
だから4月〜9月くらいにかけて、観光客は一気に集い、名所を訪ねたり、当地のグルメを味わったり、海を楽しんだりするわけです。
グラフにすると、こんな感じですね。
※ 数値出展:藤沢市観光課・公益社団法人藤沢市観光協会「藤沢市・湘南江の島 観光統計」1.観光客数統計(平成3年~平成26年)
さて、こうした楽しい時間を思い切り満喫するとき、困ることがあるとしたら何でしょう?
移動手段のこと? お目当てのお店の待ち時間? 当日のファッション? 人によって様々だと思います。
でも全ての人にとって関わりのあること、それは「トイレ」の問題ではないでしょうか?
先日、妻とその友達が話していたことです。
「江の島は観光地として有名だけど、トイレの数も足りないし、キレイじゃないから使いたくない」
「オムツを換える場所もない」
「和式トイレは子供たちが使えない。並んでいると『和式なら空いてますからどうぞ』と言われる。けど、正直使いたくない」
この時は、ママたちの集いだったので、子供に関する目線が多くありました。しかし、ある人にとっての「困りごと」は他のひとにとっても「困りごと」である場合はあるもの。
ちょっと視点を変えて思いを巡らせると、高齢者にとっても、車椅子を利用している人にとっても、海外からの観光客にとっても、「使いづらいもの」になっているかもしれない、と想像できます。
街中なら「コンビニで、大型商業施設や駅で用を足せば」と“我慢”できるかもしれません。
しかし、江の島は小さな商店(兼自宅)が多い場所。こうしたお店にトイレを借りることは、店舗の負担になることは言うまでもなく、トラブルのもとにもなりかねません。
他方、「トイレが使いづらい」「トイレがキレイじゃない」という評判が海外・国内問わず広まれば、せっかくの観光資源を駄目にしてしまうリスクすらあります。
実際にどんな状況になっているのか、は追々調べていくにしても、
このトイレ問題は、魅力ある観光地をさらに魅力的にして、多くの人に「江の島での楽しい思い出」を作ってもらうためにも、早急に取り組むべき課題なのです!
田中しげのりの提言:観光地向け公衆トイレ「藤沢モデル」をつくる
では、どのようにこの課題に取り組むか? 考えてみました。
公衆トイレを企業と一緒に刷新する
今ある公衆トイレについて、以下のような条件で提案してもらえる企業を募ります。
- 子供たちが怖がらずに使える
- 高齢者の身体行動に負担をかけない
- オムツ換えの設備を男女どちらにも設置する
- 子連れの方でも使いやすい
- 清掃がしやすい!!
- 海外に「藤沢モデル」として販売したり、東京五輪を先に見据え、「日本のトイレは素晴らしい!」と思ってもらえるような工夫や技術力を魅せる
- 国内・海外でも普及できるように、なるべく安価にする
加えて、以下の条件も付け加えましょう。
- 導入したトイレは、実証実験結果(利用者の評価・清掃担当者の評価)とともにレポートとしてまとめ、市・企業と共同リリースを行う(共同開発施設として作る)。
- 設置費については応相談とし、実証実験後は藤沢市に寄贈する。
公募に参加してくれた企業には、それぞれトイレの改修を担当してもらいます。
こうして、まずはトイレをキレイにする。これが最初のゴールです。
しかし、この取組みは「単なるインフラ整備」ではありません。
そのココロを記していきましょう。
藤沢モデルのトイレをつくる意味
先のように公募で公衆トイレを作ってもらうことには、次のような目的があります。
藤沢市としての目的
- 既存のトイレをキレイにする
- 各地の観光地でも課題となっている点にいち早く、民間企業と一緒に取り組むことで、「藤沢モデルのトイレ」を「世界に誇れる観光資源」とする
- 「藤沢モデル」として売り出してもらうことで、地域の知名度を「魅力的な観光地」としてだけでなく、公衆衛生に先進的に取り組む、ハイレベルな都市として認知してもらう
企業に提供できるメリット
- 実験の場の提供
日本のトイレは海外でも有名ですが、屋外のそれについては、まだまだ、と思う部分が多く、その理由の1つには「実証実験できる場がない」ことが考えられます。
ここでの実験を通して、ユニバーサルデザインの公衆衛生施設を作るノウハウを蓄積してもらえれば、と考えます。 - 仕様の柔軟性
今回、設備の条件は、かなりゆるいものにしたいと考えています。それは、民間企業の良さである「創造性」を大切にしたいから。
これに共感してもらえる企業にとって、これほどチャレンジしがいがある案件はないと思います。 - ノウハウを実際の商品に還元できる
「藤沢モデル」は共同開発はするものの、製造・施設に関するノウハウは全て企業に帰属させたいと考えています。
これによって、企業は国内外で自社製品を実例と合わせてPRして頂けるわけです。
まだまだ詳しく検討したり、様々な意見を聞き、政策としての精度を高める必要はあるでしょう。しかし、こうした「観光資源創出」のあり方は、今までにないものとして、注目してもらえるものだと確信しています。
観光資源になるものは、意外なところに眠っている――
そんな風に考えています。
最後に、こんな「今までにない視点」に気付かせてくれた妻の友人たちに、心からの尊敬を込めて。